信州ギター祭りでも話題となった、SuzukaGuitarDesign(スズカギターデザイン) Tierra BD111 EXをレビューします。
Suzuka Guitar Designさんを知ったのは2021年の信州ギター祭り前に公開された、タメシビキの山口さんの動画でした。
見た目のカッコ良さだけでなく、箱モノギターが欲しかった所長にグッと刺さる音であり、記憶に残ったものの、試す機会が作れませんでした。
しかし、ようやくスズカ(鈴鹿)さんのギターを唯一取り扱っている島村楽器松本パルコ店に行くことができ、手に取り鳴らすことができました。
この時、見た目が好みの個体を3本弾きまして、気に入った個体のシリアルナンバーを控え、買わずに帰りました。
島村楽器松本パルコ店の担当、たくさん弾きせてくださり、太田さんありがとうござました!
そしてそれから数週間、ずっとこのギターのことが忘れられず、悶々とした日々を送ることに。
ここまで忘れらないギター、しかも好きな音がする個体にまた出会える可能性はあるのか…考えた末、手に入れました。
今回のレビューにあたり、スズカギターさんの工房に伺い、ビルダーである鈴鹿さんにもお話を伺いました。
企業秘密以外、公表して良い情報は備忘録がてら、このレビュー記事で紹介しています。
Tierraが気になっている人は是非、最後までご覧になってみてください。
SuzukaGuitarDesign Tierra BD111 EXは島村楽器特注モデル
このTierra BD111 EXですが、モデル名にEXが付いているのが島村楽器の特注モデルであり、レギュラーモデルと以下の仕様が異なります。
- フレットはJescar #47095 ステンレスフレットを採用
- コンデンサーはSprague 2PS-S47を採用
- ペグはGotoh SG360 HAPM M07
ステンレスフレットと聞くと、今まで良い印象はありませんでしたが、このギターでは全く感じなかったです。
ジェスカーのステンレスフレットはいわゆる昔のステンレスフレットとは違う、と詳しい友人も言っていました。
音については後ほど紹介しますが、トーンを絞った時に使える幅が広いのは、Sprague 2PS-S47も関係している可能性がありますね。
レギュラーモデルも気になるところですが、フレットが減りにくいステンレスフレットであることは、個人的に嬉しい仕様でした。
ちなみに今回手に入れたTierra BD111 EXのスペックは以下のとおりです。
Body:Alder
引用元:デジマート
Neck:Mahogany
Fingerboad:MadagascarRosewood
Fret:Jescar #47095Stainless
Nut:UnbleachedBone
Scale:648mm
MachineHead:Gotoh SG360 HAPM M07
Bridge:SGD Original(GOTOH In-Tune BS Saddle)
Pickups SuzukaOrigenal N:SGD Brew1 M:SGD Brew1 B:SGD Distill1
Jack:Swichcraft11
Controls:MasterVol MasterTone 5WaySelector MiniSW
Condenser:Sprague 2PS-S47
SelectorSW:N→N+M→M→M+B→B
MiniSW:Up→N+B(Parallel) Down→Normal
Weight:2.5kg
ちなみにトップフィニッシュはネック、ボディ共に極薄ウレタン塗装。
ウレタン塗装と聞くと、ネガティブな印象を持たれる人もいると思いますが、極薄で仕上げられているため、普段ラッカー塗装のギターを触っている所長でも違和感はありませんでした。
ラッカー塗装のギターだとゴム製のギタースタンドに立てかけられないなど気を使いますが、ウレタン塗装であれば、そういった心配も不要ですね。
では、このTierra BD111 EXの特徴を解説していきます!
とにかくネックがストレスフリーで握り心地が良く弾きやすい
Tierra BD111 EX、第一印象でとにかく良かったのがネックグリップです。
形状はいわゆるUシェイプですが、手の小さい所長でも弾きにくさは皆無なちょうど良い太さ。
ローフレットからハイフレットまで、急にネックが太くなることもなかったです。
所長が所有する70年レスポールデラックスの場合、12フレット付近で太さが変わる印象があります。
これはこれで悪いとはいいませんが、比べてしまうと弾きやすさの差は歴然です。
さらに実際に音を出した時、ローフレットからハイフレットまできちんと発音してくれました。
あとプレーン弦、特に1弦がしっかり鳴るのも良いところでしょうね。
ネック材はマホガニーですが、ご覧のとおり非常に美しいです。
指板はマダガスカルローズウッド、ポジションマークはありませんが、不思議と弾きづらさはなかったですね。
フレット処理も非常に綺麗で、フレットがひっかかることも皆無、とにかくストレスフリーなネックでした。
手間をかけ作られた耐久性に優れたネック
スズカギターではネックトラブルがないように、ネックは加工過程で安定した状態まで持っていくとのこと。
加工過程でねじれなど、問題が生じ解消されない材は使用しないことで、耐久性の優れたネックを選定し採用しています。
デタッチャブルギターであるため、最悪の場合はネックを差し替えることはできますが、できればネックトラブルは避けたいところ。
ネックトラブルをそこまで心配しなくても良いのは、弾き手からするとありがたいですよね。
所長が買ったTierraもネックは安定しており、季節の変わり目で起きる反りなどもありません。
単なるホロウ構造ではないオリジナリティーある仕様と丁寧な作りも魅力
このTierraはホロウ構造、いわゆる箱モノギターです。
面白いのが音響特性や強度を考えて、ボディのくり抜きが箇所によって異なっています。
実際、ボディを叩いてみましたが、箇所によって確かに音は違いました。
では、所長が触ってみて気に入った点を紹介していきます!
驚異的にノイズが少ないギターでハウリングも起こしにくい
ボディ内部に黒い色が塗られていますが、これは導電塗料です。
実際に鳴らしてみますと、ホロウ構造とシングルコイルでありながら、驚異的にノイズは少ない。
導電塗料を採用した場合、高域が抜けないなど弊害が出そうなのものですが、さすがにそこは考えた上で設計されているとのことです。
このTierraを弾いた後にテレキャスターを弾くと…ノイズレベルの違いにびっくりしました(笑)
ホロウ構造のギターといえば、ハウリングに悩まされることもありますが、手持ちのES-335と比べてもハウリングが起きにくかったですね。
ボディに接着されている木製のピックガードは見た目の良さだけじゃない
ピックガードは木製であり、数枚の板を接着し作られており、直接ボディに接着されています。
この構造も単に見た目ではなく、音響特性と強度を考えての仕様。
ちなみにボディバックを見てみますと、コントロールパネルもピックガード同様の仕様で木製パネル。
ちなみにノブも木製と、とにかく見た目がカッコ良いギターです。
プレイアビリティが考慮された丁寧な作りも魅力
プレイアビリティが考慮された作りとして、ネックジョイント部もカットされているため、演奏性も抜群です。
あとネックヒールエンド部も写真のとおり、丁寧な処理がされています。
ネックとボディの曲線が綺麗につながっている印象もあり、細部までこだわり、丁寧に作られていると感じました。
ヘッドシェイプはオリジナルデザイン、落とし込み仕様でこちらも手間がかかっています。
この形状も所長的にはカッコ良く目に映りました。
所長は普段テレキャスターをよく弾いていますが、このTierra、ストラップの長さを変える必要がなかったです。
立って弾いた時も、ギターを持ち替えた時の違和感がなかったのも有り難かったです。
というよりも、Tierraのほうが弾きやすかったですね!
ギター重量はわずか2.5kg!めちゃくちゃ軽くて取り回しが最高
ギター重量は2.5kg、手持ちのギターと比較しても取り回しがよく、付属のGatorケースに入れても軽いため、トラベルギターとしても使えると感じました。
付属のギグケースは、GATOR GT-ELECTRIC-GRY。しっかりしたケースも付属していたのも何気に嬉しかったですね!
ちなみに島村楽器松本パルコ店で3本ほど弾き比べした際、微妙に重量が違いました。
思い描いていた音に近い個体は重さが2.5kg程度でして、3本弾いた中でやや重たい個体が所長は好みでした。
Marcoさんが弾いている個体と悩みました…とはいえ、どの個体もサウンドキャラクターは同じでしたので、そこまで神経質にならなくても良いでしょうね!
SuzukaGuitarDesignオリジナルピックアップ「Brew」「Distill」について
ピックアップはSuzukaGuitarDesignオリジナルピックアップであり、3シングルコイル構成です。
オリジナルピックアップは何パターンか作られているとのことで、このギターに搭載されているのは「Brew1」と「Distill1」。
SuzukaGuitarDesignさんにいただいた資料によると、以下のような特性です。
出音の印象はこの説明にあるとおりであり、ギター本体のサウンドバランスも考えられて開発されたピックアップといった印象でした。
採用されているピックアップは、ギターの型番からわかるようになっているそうで、この個体はBBD111。
- Brew1(ネック)
- Brew1(センター)
- Distill1(ブリッジ)
上記仕様であることがわかります。
ピックアップのサウンドバリエーションが豊富で実用的
ピックアップセレクターは5WAY、以下5通りのサウンドが鳴らせます。
- ネック
- ハーフトーン(ネック&センター)
- センター
- ハーフトーン(センター&ブリッジ)
- ブリッジ
各ピックアップポジションにおける、出音のバランスが良かったのも好印象。
ネックポジションでも抜けの良いサウンド、ブリッジも肉厚感あるサウンドであったことは、好みにバッチリ合いました。
さらにミニスイッチでテレキャスターのセンターポジションでおなじみのネック、ブリッジのMIXサウンドが鳴らせます。
MIXサウンドは鈴鹿さんも外せないとおっしゃっていましたが、なるほど…納得でした。
確かに鳴らすと欲しくなるサウンドであり、サウンドバリエーションとして、ミニスイッチ一発で切り替えできる利点は大きいと感じました。
肝心のサウンドはどうだったのか?レビューしていきます!
Tierra BD111 EX サウンドレビュー
Tierraのサウンドについて、以下の動画で紹介していますので、まずはご覧になってみてください。
0:00~ ギター解説&所長が欲しかった理由を紹介
9:18~ SuzukaGuitarDesign Tierra BD111 EX
9:58~ Fender CS 59 Telecaster NOS
10:31~ Fender CS 60 Stratocaster
11:03~ Clean Booster & SuzukaGuitarDesign Tierra BD111 EX
11:54~ Overdrive Pedals – MYTHOS PEDALS Mjolnir Joey landreth Edition
14:01~ Fuzz Pedals – Paul Trombetta Mini Bone GeSi
15:39~ Overdrive Pedals – Hudson Electronics Broadcast AP
16:04~ Tierra with Roland JC-40 & Hudson Electronics Broadcast AP
18:49~ まとめ
Tierraのサウンドですが、ホロウ構造特有の箱鳴り感を感じますし、良い意味で独特で個性的です。
所長手持ちのギター達と比べても、明らかにオリジナリティあるサウンドでした。
テレキャス、ストラト、ES-335でもないサウンド…とはいえ、所長の鳴らしたい音はバッチリ鳴ってくれたギターでした。
ピックアップをネック〜ブリッジポジションに切り替えた時のバランスも良し。
所長的にネック側がこもらず、ブリッジ側はか細さ無く、しっかり鳴ってくれたのも好印象でした。
さらにミニスイッチ一発で、ネックとブリッジピックアップのミックスサウンドが出せるのも、実用性が高い仕様ですね。
例えばミニスイッチ一つで、バッキングはミックスサウンドで鳴らし、ソロはネックピックアップを鳴らすなんてこともできます。
生鳴りがとにかく良く、弾いていて気持ちの良いギターです。
生鳴りの感じは、アンプからアウトプットされるサウンドにも反映しており、空気感あるサウンドも得られます。
箱モノギターを探している人であれば、ぜひ試してほしいギターです。
ピックアップの出力は低いため、もしかすると出音が少し小さく感じる場合も。
この場合はアンプのボリュームを上げる、クリーンブースターを併用してみると良いです。
動画ではクリーンブースターとして、MYTHOS PEDALS Mjolnirを踏んでいます!
歪みエフェクターとの相性について
動画でも所長が普段愛用している、歪みペダルと組み合わせ鳴らしていますが、相性も問題ありませんでした。
さらに所長のメインエフェクターボードでもサウンドチェックしてみたところ、大幅にセッティングを変更することなく、鳴らせたのも良かったです。
0:00 ~ Hudson Electronics Broadcast AP – Bypass Sound
0:19 ~ MYTHOS PEDALS Mjolnir Joey landreth Edition
0:53 ~ Chicago Iron TYCOBRAHE OCTAVIA
1:40 ~ Paul Trombetta Mini Bone GeSi
2:44 ~ Dual Phaser – ZOOM MS-CDR70 EVA MOD
3:14 ~ DRY BELL Vibe Machine V-3
3:57 ~ Organic Sounds Orga Face BC183
6:07 ~ Noise & Feedback Check – Orga Face On
この動画でも踏んでいますが、低出力であるピックアップの恩恵も関係しているのか、ファズとの相性も良かったのも所長的には嬉しかったですね。
ボリュームとトーンの効きがめちゃくちゃ良い
このTierra、所長はよくギターボリュームやトーンを触りながら弾きますが、これらツマミの効きが良かったのも好印象でした。
ボリュームはハイパス仕様ですが、ボリュームを絞っていった時に変に高域だけが強調されるのではなく、立体感のあるサウンドが得られます。
所長の場合は普段ギターボリュームは8〜9ぐらいにセットし、4〜7あたりまで使うことが多いのですが、よく使うポジションにおいて聴感上でナチュラルなサウンドに感じました。
ギターボリュームをよく触るプレイヤーであれば、かなり気に入ってもらえそう。
トーンはSprague 2PS-S47が採用されている恩恵なのかはわかりませんが、絞っていった時も音の芯が残る感じがあり、使えるポジションの幅が広いです。
基本的に空気感あるサウンドではあるものの、トーンをMAXにすればソリッドギター感もだせますし、トーンを絞っていくことで箱モノギターである感じを強調できます。
例えばトーンを絞り切る直前ぐらいにセットし、歪ませつつブリッジピックアップで弾くと、野太いサウンドが得られます。
シンプルなギターですがボリュームとトーン、ピックアップポジションを駆使することで、多彩なサウンドが得られるのもTierraの魅力ですね!
Tierraはもっとたくさんの人に弾いてみてほしいギター
SuzukaGuitarDesign Tierra、とにかくもっと認知されたほしい、弾いてみてほしいギターです。
実は所長にとっても、初の国産ハイエンドギターでしたが、非常に満足しています。
今回のレビューにあたり、ビルダーの鈴鹿さんにTierraについて伺いましたが、公表できない秘密がたくさん詰め込まれたギターであることもわかりました。
所長もそうでしたが、動画やレビューではわからない良さが体感することで、きっとあります。
機会があれば、実際に鳴らしてみてほしい箱物ギターです。
このレビューを見ていただき、少しでもSuzukaGuitarDesign Tierraの良さが伝われば幸いです!
最後にルシアーの鈴鹿さん、いろいろ質問にお答えいただきありがとうございました!
Suzuka Guitar Design – Twitter
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