
BOSS PX-1を実機と比較しながら、サウンドの再現性や操作性についてレビューします。
発売されたPX-1は、1977年以降に登場したBOSSコンパクトペダルのサウンドを、一台で体験できるといったもの。
1977年の登場以来、多彩なラインナップと先進的なサウンドで数多のギタリストへ感動を届けてきたBOSSのコンパクト・ペダル・シリーズ。これまでに誕生したあらゆるモデルは、そのひとつひとつが色褪せることのない魅力を持ち、現代においても新しいインスピレーションをもたらしてくれます。PX-1で、BOSSの歴史を彩ってきた個性豊かなコンパクト・ペダルを体験しましょう。オリジナルの持つ音楽的なキャラクターを余すことなくとらえたPX-1が、時代を越えたサウンドを届けます。
引用元:BOSS PX-1 公式サイト
マルチエフェクターと思われる人もいると思いますが、コンセプトからしてもエフェクトを2個同時がけなど、使用感を求めるようなモデルではないですね。

ちなみにデジタルエフェクターとはいえ、レイテンシーやデジタル臭さは感じないレベルです。
実際に弾いても気にならない理由は公式サイトにも書かれていますが、一つのエフェクトにDSPの能力を使っているためでしょう。
録音してもそれは同様であり、デジタルだからと敬遠されている人にこそ、試してほしいモデルです。
内蔵エフェクト(ペダル)モデルについて
PX-1、2025年9月に発売されたタイミングでは、デフォルトで以下8つのエフェクトを搭載。
エフェクト名 | 種類 | 発表年 | サウンドの特徴 |
---|---|---|---|
OD-1 OverDrive | オーバードライブ | 1977 | 中域が持ち上がる滑らかなソフトクリッピング。低域はタイトでブースト用途にも向く |
SP-1 Spectrum | バンドパス系EQ | 1977 | 固定帯域のピークを強調して鼻にかかったようなトーンを作る。コックドワウ風 |
PH-1 Phaser | フェイザー | 1977 | 4段位相シフトによる穏やかな揺れ。スイープが滑らかで音痩せが少ない |
SG-1 Slow Gear | ボリュームエンベロープ | 1979 | アタックを削ってスローアタック化。ボウイング風の立ち上がりで単音に効果的 |
CS-1 Compression Sustainer | コンプレッサー | 1978 | 比較的強いコンプでアタックを丸めサステイン延長。ハイ寄りで明るい質感 |
TW-1 T Wah | エンベロープフィルター | 1978 | 入力に応じて上昇/下降スイープ。オートワウ的なクワッとした動きでファンク向き |
SD-1 Super OverDrive | オーバードライブ | 1981 | 非対称クリッピングで中域が張り出す。OD-1よりゲインが高く中域に特徴 |
DS-1 Distortion | ディストーション | 1978 | 低高域が強く中域やや控えめでザクっとした切れ味 |
さらにアップデートをすることで、さらに8モデルが追加できるため、合計で16種類のサウンドを楽しめます。
エフェクト名 | 種類 | 発表年 | サウンドの特徴 |
---|---|---|---|
CE-2 Chorus | コーラス | 1979 | CE-1直系のコーラスサウンド |
BF-2 Flanger | フランジャー | 1980 | スタンダードなフランジャーサウンド |
VB-2 Vibrato | ヴァイブレート | 1982 | ピッチが上下する効果 |
DD-2 Digital Delay | デジタルディレイ | 1983 | アナログな雰囲気のあるディレイ |
DF-2 Super Feedbacker & Distortion | ディストーション+フィードバック | 1984 | フィードバック効果も得られるDSペダル |
OC-2 Octave | オクターブ | 1982 | 上下のオクターブ音を重ねる |
PS-2 Digital Pitch Shifter/Delay | ピッチシフター+ディレイ | 1987 | ピッチ操作と遅延の組み合わせ |
PN-2 Tremolo / Pan | トレモロ/パン | 1990 | 音量揺れやステレオ定位揺れ |
アップデートしなければ上記のモデルは入らないことや、PX-1に取り込むまでの時間がかかるといった不満の声もみましたが、所長は20分程度で完了しました。
肝心のサウンド、アナログペダル(実機)と比べて気になる人もいるでしょう。
以下、実機と比較しながらレビューした動画を紹介します(随時更新)。
BOSS CE-2(銀ネジ)と比較
銀ネジのCE-2と比べると、エフェクトはかかり、タイトなサウンド。
所長の記憶からすると、黒ネジのCE-2に近い印象も受けました。
BOSS PH-1と比較
PH-1もCE-2と同様、PX-1のほうがエフェクトのかかりもよく、クリアなサウンドに感じました。
PH-1のほうがピッキングした時にわずかに歪む、ジューシーなサウンドにも感じましたが、そこまで大きな差ではありませんでした。
上記の特性は、古いPhase90などにも言えるので、面白い。
とはいえ、所長としては使う上で問題のない違いでした。
BOSS DD-2 & OC-2と比較
DD-2と比べると、予想していたよりもPX-1のほうがアナログディレイっぽい。
ただし感じた部分も念の為、DD-3とDD-2を比べてみましたが、個体差程度の違いと感じました。
OC-2はかなり似ていまして、良い意味で不安定なエフェクトのかかり具合も含め、再現している印象です。
ちなみにディレイでいうとTail機能が欲しい人もいると思いますが、PX-1はCarry Over機能が該当し、ONにすることでエフェクトOFF時に残響音が残るようになります。
あると便利な機能を実装するあたり、単に古いモデルのサウンドを再現するだけでなく、機能面でのブラッシュアップを怠らないBOSSの拘りでしょうね。
BOSS SD-1/初期型 NEC C4558と40周年黒SD-1と比較
SD-1でも初期型となるNEC C4558と比べると、音を完全に寄せるのは難しかったのは正直なところ。
PX-1のサウンドは、40周年の黒SD-1(SD-1-4A)のほうが、近い印象を受けました。
細かな違いはあるとはいえ、パッと鳴らした時はSD-1サウンドを感じたため、拘らなければ問題なく鳴らせます。
実機のサウンドを求める人は、気に入ってる同年代のSD-1を探したほうが幸せになれます。
ただし、年数が経っているため、故障するリスクは諦める必要があるでしょうね。
BOSS DF-2と比較
PX-1と比較したのは、所長も好きなBOSS DF-2、一般的にはSUPER Feedbacker Distortionで知られるモデルです。
SUPER Feedbacker & Distortion今回の検証で弾いたのは、初期型となるSUPER Distortion & Feedbackerの印字の個体。
DS-1系のディストーションペダルと言われていますが、DF-2のほうが少し中域があるサウンドです。
DF-2は、フットスイッチを長押しすることで、擬似的にフィードバックサウンドを再現してくれる面白いペダル。
PX-1と比べると、DF-2のほうがハイミッドにピークがありまして、フィードバックさせた時でも顕著でした。
出音の帯域が異なるため、フィードバックサウンドに違いがありますが、PX-1のTONEを触ることで雰囲気は似てきました。
操作性は実機を踏襲していたので、所長としては満足です。
BOSS OD-1/NECクワッドシリアル8800番と40周年復刻OD-1と比較
OD-1はNECクワッドオペアンプのシリアル8800番、あと2017年にセット販売された40周年の復刻モデルを用意しました。
あくまで所長の感覚として、40周年のモデルよりはPX-1のほうがOD-1らしさ、初期レイセオン期に近い印象は受けました。
NECクワッドオペアンプは、レイセオンオペアンプと比べると、やや中域があって柔らかいサウンドであったと記憶しています。
OD-1の特徴、ハイミッドが抜けてくるようなカラッとした特有のサウンドと見ると、PX-1のほうが雰囲気はあるように感じました。
ただし、PX-1の場合、低域は出ているように感じまして。
バイパス音自体も同じ印象であり、エフェクトサウンドに影響を与えていると感じました。
バイパス音は改善されている印象あり
サウンドの違いはバイパス音が近い点に挙げることができまして、昨今のBOSSペダルは低域から出る印象もあり、エフェクトサウンドに影響していると考えています。
サウンドの影響はSD-1だけに限らず、他のエフェクトモデルも同様、入力インピーダンスの違いも関係している可能性もあります。
ちなみにBOSS PX-1の入力インピーダンスは1MΩであり、実機となるモデルは以下表のとおりです。
エフェクト名 | 入力インピーダンス | 備考 |
---|---|---|
OD-1 OverDrive | 220 kΩ | ー |
SP-1 Spectrum | 220 kΩ | ー |
PH-1 Phaser | 220 kΩ | ー |
SG-1 Slow Gear | 470 kΩ | ー |
CS-1 Compression Sustainer | 470 kΩ | ー |
TW-1 T Wah | 470 kΩ | ー |
SD-1 Super OverDrive | 470 kΩ | 現行機は 1 MΩ の資料もあり |
DS-1 Distortion | 470 kΩ | 現行機は 1 MΩ の資料もあり |
CE-2 Chorus | 470 kΩ | ー |
BF-2 Flanger | 470 kΩ | ー |
VB-2 Vibrato | — | 公式資料に明確な数値記載なし |
DD-2 Digital Delay | 1 MΩ | ー |
DF-2 Super Feedbacker & Distortion | 1 MΩ | ー |
OC-2 Octave | 1 MΩ | FET入力 |
PS-2 Digital Pitch Shifter/Delay | 1 MΩ | ー |
PN-2 Tremolo / Pan | 1 MΩ | MONO接続時は 500 kΩ |
ただし、上記入力インピーダンスの違うも含め、BOSSはサウンドの再現を試みているとも感じられました。
各種モデルを弾いた時、きちんとサウンドの雰囲気を感じ取ることができたからです。
イメージするサウンドが鳴らせる、仕上がりであったことはさすがBOSSだと感じました。
SWAPファンクション機能が便利
エフェクトの2個同時がけはできませんが、異なるエフェクトを外部フットスイッチを使うことで、切り替えて鳴らすことは可能です。
例えば、PX-1のSWAPファンクション機能でCE-2とPH-1サウンドを設定し、FS-7のような外部フットスイッチでエフェクトを切り替えることができました。
現状、確認できている範囲では2個のエフェクトを切り替えることができましたが、設定次第で4個まで切り替えできる可能性もあります(今後、検証予定)。
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